【センス博士の今週のトピック】Vol. 10 – 第3章
これは、創造の「柱」か、破滅の「竜」か。ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた、宇宙のアート
こんにちは、センス博士です。 宇宙シリーズ、最終章へ、ようこそ。
前回、私たちはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の、驚異的な技術力について、学びました。 では、その人類史上、最高の「目」は、一体、他にどんな息をのむような、宇宙の姿を捉えてきたのでしょうか。
今回は、JWSTが私たちに見せてくれた、数々の「宇宙のアート」の中から、特に私たちの、想像力を刺激する、2つの作品をご紹介します。

創造の柱(Pillars of Creation)
1995年に、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影し、世界中を驚かせた「わし星雲」の中にある、巨大なガスと、塵の柱。通称「創造の柱」。 その姿が、JWSTの赤外線の「目」によって、全く新しく、生まれ変わりました。
ハッブルが捉えた、荘厳で霞がかった姿とは対照的に、JWSTの画像では、柱の向こう側にある、無数の生まれたばかりの、赤い星々が、透けて見えています。 まるで、厚い雲の隙間から、朝日が、差し込むように。 この柱の中で、まさに今、新しい「命」が生まれつつある、その力強い鼓動まで、聞こえてきそうです。 詳しくは、**NASAの公式サイトの解説**でも、見ることができます。

コズミック・クリフ(Cosmic Cliffs)
日本語に訳すと、「宇宙の断崖絶壁」。 これは、地球から約7,600光年離れた、「りゅうこつ座(イータカリーナ星雲)」の中にある、星形成領域です。
その姿はまるで、夕日に照らされた茶色の、雄大な山脈のよう。 ですが、その「山頂」から、立ち上る青い「蒸気」のようなものは、巨大な恒星から放出される、強烈な紫外線によって削り取られているガスと、塵なのです。 そして、その青いベールの中では、私たちの目には見えない、たくさんの新しい星が産声をあげています。
美しく、そして荒々しい。「創造」と「破壊」が、同時に存在する、この壮大な風景は、もはや科学の記録ではなく、見る者の心を揺さぶる、一枚の偉大なアート作品と、言えるでしょう。
私たちの、人生における、「思い出」も同じかもしれません。 楽しいだけの記憶だけでなく、時には悲しく、そして厳しい、記憶もある。 ですが、その全てが合わさって、今のあなたという、世界に、一人だけの、尊い存在を形作っているのですから。
完