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【センス博士の今週のTopic】Vol. 16 – 第3章

「光の魔術師」と呼ばれる、17世紀のオランダの画家、ヨハネス・フェルメール。 彼の描く絵は、まるで写真のようにリアルで、その光の表現は、あまりにも完璧なため、「これは、本当に人間の目で見て描けるレベルなのか?」と、長年アート界の大きな、謎とされてきました。
そこに、一石を投じたのが現代美術家のデヴィッド・ホックニー氏などが提唱した、大胆な仮説です。 それは、「フェルメールは『カメラ・オブスクラ』という、原始的なカメラの装置を使って、絵を描いていたのではないか?」という、ものでした。
「カメラ・オブスクラ」とは、写真技術の原型となった装置で、暗い箱の中に、小さな穴を開けると、外の景色が反対側の壁に、上下、左右、逆さまに映し出される、というものです。 フェルメールは、この壁に映し出された像を、なぞるようにして、あの驚異的な写実性を、実現していたのではないかというのです。
この、仮説はアート界に大きな論争を巻き起こしました。 「それは天才への冒涜だ!」という、批判の声。 「いや、テクノロジーを使いこなすことこそ、真の天才の証だ」という、擁護の声。
この、論争を描いた、「フェルメールの謎~光の天才画家とカメラ・オブスクラ~」といった、ドキュメンタリー番組も、制作され、大きな話題となりました。
テクノロジーは、アートの敵なのか味方なのか。 この問いは、AIが、絵を描き刺繍ミシンがアートを生み出す、現代の私たちに改めて深く問いかけてきます。 「創造性」とは、一体、何なのでしょうね。
